よくこんな事は聞いた事がないでしょうか?
『学習能力は20代をピークに、年齢を経るごとに退化して行く』とか、
『三つ子の魂百までと言うように、幼少期の性格がその後の成長した自分の性格を決定づける』とか。
現代の脳科学的に、以上の定説は少し疑ってみた方が良いかもしれないという内容が、この本には書かれています。
確かに最近においては医学的、脳科学的な定説が覆っている事、多いですよね。
ここではIQ(知能指数)は、学習の上ではそれ程関係ないとまで断言しています。
その他にも今までの学習のあり方について、その常識を覆すような事が幾つか書かれていますので、それらを少し紹介したいと思います。
集中学習よりも分散学習
何事も物事は絞り込んで、その事に集中して向き合う事が、最も結果の出るやり方だと認識している人は多いと思います。
しかし、ここではそれよりもっと効率的で効果的であるという事を立証した実験データを元に、違った角度からその認識を覆しています。
まず、この分散学習の定義は、単に学習しているものと別の事をしろと言っている訳ではなく、勉強時間を小刻みに区切って行く事を指しています。
例えば、同じ勉強を1時間するにしても、30分行い、間を空けてもう30分行うという方法です。
人の集中力は持続しても15分程度とされており、その先は結構ダラダラとしてしまいがちです。
心理学的にもポロモードテクニックという手法があり、25分間学習し、5~10分程休憩して更に25分間という流れを断続的に繰り返す事が、最も効果が高いとされているメソッドとして有名です。
まさに、そのポロモードテクニックに通じる話がここでは書かれていました。
同時にランダム学習の効果についても述べられていました。
例えば一つ一つの単元を集中的に学習するグループAと、ランダムで分散させて学習したグループBでテストを行った結果、ランダムで分散して学習を行ったグループBの方が、グループAよりも2~3倍も良い結果を出しているというデータも示されていました。
私も学習においては、何事も集中すべしと考えていた方なので、グループAのやり方が結果を出すと思っていましたが、実証結果では真逆の結果だったという点については、本当に意表を突かれました。
ただ、ここで勘違いしてはいけない事として、いくら分散させて学習するのが良いからと言っても、マルチタスクはNGとされています。
あくまでも学習の趣旨に則った内容をランダムに処理する事を指しており、一つの事をやりながら、別の事を同時に行う事を分散学習という定義はあてはまりません。
もっとも、学習をしながらスマホで何かをするというのは論外でしょう。
復習の間隔と答え合わせのタイミング
ここでも復習のスタンスについては、等間隔で行う事が良いと書かれています。
例えば、インプットした内容について、1回目の復習を次の日に、2回目の復習を1週間後にするよりも、3日だったら3日ごとに均等に行う等の方が、知識としては定着しやすいという事です。
これはルーティンによる習慣形成のプロセスと似ている話ではあるのですが、時間というリズムを上手く使う事により、知らず知らずに人は身体で覚えて行くものであるという事だと理解しました。
答え合わせのタイミングについても、小テストを行う際、1問解いてすぐに答えを見るより、まとまった回答を実施した後に、まとまった答え合わせをする方が、結果が出ているという実験データも紹介されていました。
四次元的に物事を考え、時間さえも味方につけて、愚直に実行する事が大事という事ではないでしょうか。
プレッシャーはワーキングメモリを狭める
脳の機関にはワーキングメモリというものが存在し、その名の通り、パソコンで例えるとメモリの部分に相当する機能です。
これが、人のインプット・アウトプット領域に大きく関係しており、不安やプレッシャーなどによる、精神の乱れによって半減してしまうという事を意味します。
これは誰もが思い当たる節があると思います。
三国志に登場する天才軍師、諸葛孔明も何事も最善の結果を出す為には、まずは必ず落ち着く事という格言を残しています。
聞けば何気なく変哲もない言葉ではありますが、戦時中のギリギリのタイミングで、その状態でいられるという事は、とても難しい事であったはずです。
不安の正体を突き止める為には、まずは書き出す事が重要で、不安を客観的に捉える事により、心が整うと同時に自律神経も整い、最良の結果を出せるのだと思います。
以上はほんのダイジェストになりますが、人によってその考え方に個体差はあるかもしれません。
どこまで行っても、自分に合ったやり方を探すという事が、その人にとって最良の方法です。
本にも書かれていましたが、全ての実力は平均値に基づきます。
偶然運良くテストで良い点数を取れても、反対に不調が原因で結果が最悪だった、というケースはあまり参考にはならず、10回テストを行ってその平均で自分の実力を測るやり方が、本来の自分を見つめる手段に近い方法です。
これは140試合のペナントレースを戦い抜くプロ野球と、トーナメントで一発勝負の高校野球程の違いがあります。
何となく高校球児の方が一生懸命で、汗と涙が目立つシーンが、我々の心を打つ場面であり、あの姿こそが頑張っているという象徴を我々に抱かせます。
事実、頑張っているのはその通りだと思いますが、その中からプロとして通用する選手はほんの一握りです。
当然、実社会で結果を求められる事を前提とした学習の質は、プロとして安定したアウトプットを求められる事が常です。
そこに至るプロセスとしては、常に平常心で、空気を吸ったり、水を飲んだりする事と同じぐらい、その物事を自然として扱えるぐらいの状態に持って行く事が必要です。如何に習慣として無理なく落とし込むかが、勝負であるという事が読み取れます。
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