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スピリチュアルマシーンを読んでみた

この本は1999年に、アメリカの発明家であるレイ・カーツワイルという人が書いた本です。

この人はあの大物ミュージシャンであるスティービー・ワンダーを発掘した人としても知られており、シンギュラリティという言葉を提唱している人でもあり、近代ではAIなどのコンピューター業界においては知らない人の方が少ないのではないかというぐらい有名な人です。

最近日本でも、落合陽一という若手の研究者兼実業家がニュースやメディアで活躍しているが、彼はおそらくカーツワイルの影響を受けているのではないかと見ている。

彼がこの本を書いてもう20年以上経っているのだが、今読んでみると、とてもではないが20年前の人間が書いたとは思えない程、今の我々にとってみても、最先端を行っていると感じさせる内容だった。

現代の人が、未来を語る著書を出しても、彼の20年前の未来予測よりも遅れた見解を述べるのではないかという予感さえするぐらい、最先端を行っている。

確かにAIというちょっとしたブームは今に限らず、ちょうどこの1999年頃に流行った時期があった。

映画でもマトリックスやA.I.というタイトルの作品も上映され、この頃から確かに注目はされていた。

特にマトリックスは量子力学の観点から描かれており、上映された当時、まだ学生の頃の私にとっては難解な話で、キアヌ・リーブスが曲芸のような体制で銃弾をかわすシーンや、ド派手なアクションシーンしか面白みを感じる事ができなかった。

しかしあれから年月が経ち、量子力学の知識を実装して20年越しにあの作品を見ると、つくづく素晴らしく知的な作品である事がよく分かる。

20年以上経った今でも、その続編作品が企画されているらしく、50歳を過ぎたネオとトリニティがどのように活躍するのか、その動向に注目したい所だ。

さて話を戻すと、時間というふるいに掛かっても、非の打ち所がない程に未来を予想し、本質を言い当てているこの著書は、最先端であると同時に、ここまでの先見性を持つレイ・カーツワイルという人物そのものにも興味を惹かれる。

一方で、この本を正確に読み込もうと思えば、一定のITに関する知識や、量子力学、量子コンピューティングに関する知識がある程度備わっていないと、人によっては何を行っているのかさっぱり分からないという、置いてけぼりを食らう本でもある。

私もITや量子について深い見解を持ち合わせている訳ではないが、せめてムーアの法則が何であるか、量子が物質と波動の性質を同時に合わせ持つぐらいの事は、言われてピンと来るぐらいの程度で、ある程度話にはついて行けるとは思う。

ストーリーの中身について話すと、如何にしてコンピューターが意識を持つのか、単にトランジスタを何万個もセットするような量的な話なのか、意識の本質を人類がどこまで理解しているのかというような葛藤が見え隠れしていたと思う。

そもそも意識や心という概念と、思考という概念は似ているようで異なっているのではないかと思う。

一般的に意識は脳内で生成される合成物のように捉えている人も少なくないかもしれないが、実は臓器や筋肉や骨という、身体という身体全体で機能するという説や、もっと霊的なスピリチュアルな領域に基づく説が用いられる事もある。

カーツワイル自身は、東洋の神秘に対して深い関心を持っているようではあるが、確かにこの定義がズレていると、本質的に意識をコンピューターに実装する事は不可能なものとなりそうだ。

この前提部分の話から始まり、人間とAIの関わり方についてまで、チャット形式で述べられていた。ここではAIのモーリーと2019年、2029年、かなり飛んで2099年までこの形式で会話を続けるシーンも登場するのだが、ここではカーツワイルの妄想が大いに含まれていて、それでいてAIと人間のヒューマニズムが微笑ましい部分でもあった。

友情や恋愛も、もしかしたらAIで良いのではないかというような描写もあり、人によっては到底理解に苦しみ、受け入れ難い内容も含まれている。

予言書のようなこの本の通りに、現代の我々はシンギュラリティに着実に向かっている。

我々が受け入れようが入れまいが、テクノロジーは日々進歩しており、我々の既存の価値観をぶち壊し、都合の悪い真実が続々と炙り出される時が、そう遠くない将来に訪れるかもしれない。

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